酒とバラの日々 11

入院生活80日目。
退院は19日らしいので、あと11日でこの病院ともオサラバや。
前回と違って、病院の自由参加のプログラムやソフトボールにもほとんど参加してるので、そこまで暇ではなかったけど、それでも長かったわ。
昨日は、久々にソフトボールに参加したけど初めて三打数ノーヒットやった。
前回の入院の時に一度だけ参加した時は、四打数二安打一ホームランの大活躍でアル中相手やったら余裕やなと思っててんけど、今回は全然あかんわ。
打つ方は昨日以外は結構打ってんねんけど、守備は、一向に上手くなれへんし、野球センスないんやろなあ。
退院までにあと二回チャンスあるので、なんとか一度は、大活躍したいな。
今日のARPは、レクチャー。
医者や看護士がやるお酒の怖さについての講義みたいなもん。
前回入院した後にインターネットや本でアル中については大概調べたので、ほとんど知ってる事ばっかりやけど、酒やめる気で聞いてるとそれなりに為になるプログラムやね。
今日は、俺の主治医のM先生が講師やった。
テーマはアルコールが引き起こす身体の病気。
前、入院してた時にも習った記憶があるわ。
前は右から左へ聞き流してたけど、今回はちゃんと聞いた。
肝炎→脂肪肝→肝硬変→死、または肝硬変→肝癌→死って感じらしいな。
幸いにも肝臓は丈夫なようで肝炎でまだ止まってるわ。
ここらで酒止めとかな次入院する時には、確実に脂肪肝にはなってるやろうな。
印象に残ったのは、飲酒者の数と肝硬変の死亡者の数を国別でグラフで見たんやけど、死亡者トップはフランスやった事。
意外やったわ。
ワインばっか飲んでるからかな?
あんなんアルコール度数低いし、そこまで身体に害なさそうやけどな。
スペインが二位やった。飲酒者の二人に一人がアル中らしいロシアがトップやとばかり思ってたわ。
主に飲む酒ウォッカやろうし。
日本は、先進国の中ではかなり下の方やった。
だからこそ俺がこんな冷たい目で見られるんやろうな。
しかも俺が住んでるとこ、市内より和歌山の方が近いド田舎やし、看護師が大阪やったらどこにでもあると断言してた断酒会さえないとこやからな。
AAは、あったらしいけどクリスマスに見学行ったら閉鎖されてた。
しかもリーダーやった人が入院して他にやる人がいなかったからという理由での閉鎖らしい。
絶対リーダー入院したん原因、酒やろ。
そんなアル中の絶対数が圧倒的に少ない土地やからこそ、入院前、いつも酒買ってたコンビニで、朝からストロングチューハイ二本買ったら店員にめっちゃ小声で「屑が…」って呟かれたんやろうな。
しっかり聞こえてたからな。
あの店員は、ほんまシバいたるべきやったわ。
もう五年位住んでるけど、俺以外にアル中を見掛けた事ないもん。
アル中は、孤独を避け、怒りを捨てないと断酒できないって病院で千円で買わされた本に書いてたけど、俺の八割は怒りでできてるからなあ。
孤独もそんな嫌じゃないし。
完全断酒は、難しいやろうなあ。
レクチャー終わってから担当ケースワーカーがやって来て、退院したら作業所通ったらどうって勧めてきた。
作業所ってのは、断酒会やAAが夜からしかやってないので、空いた時間を過ごす場所を作ってくれというアル中の要望から生まれた施設らしい。
時給50円位で内職やったり、週一で酒害ミーティングやったりするみたい。
完全に定年退職して暇も金もある老人か、生活保護受給者向けの施設やろ。
俺が失業保険が出る三ヶ月間は、働く気はないと言うてるんをおかんから聞いて勧めてきたんやろな。
最後のモラトリアムを満喫するつもりでおんのにそんなとこ誰が行くかっつーの。
それやのに話は勝手に進んで来週金曜日に見学行く事になった。
前回入院した時のケースワーカーは、俺が飲んでるのをチクってドボンにぶち込む事くらいしか仕事しなかったのに、今回のケースワーカーは、仕事熱心で困るわ。
断れる雰囲気じゃなかったもんな。
担当看護士も付いて来るし、病院から車も出してくれるそうで、全然望んでないけど至れり尽くせりやね。
明日は、二泊三日で外泊取ってる。
入院中、代わりに買っといてくれるように弟に頼んどいたビックコミックスピリッツ(置いてるコンビニほんまに少ない)取りに行くねん。
そのまま弟の家で一泊して、次の日家帰って一泊して、その次の日病院に帰る予定。
あと11日で退院やし、最後の外泊になるかもな。